なぜ、今、日本でDXが議論されるのか 〜 注9

公開: 2021年4月24日

更新: 2021年5月16日

注9. 共産主義

19世紀のドイツの経済学者カール・マルクスは、「資本論」を発表し、資本主義は生産手段を所有する資本家が、その生産手段を使って生産を実施する労働者から搾取して富を築く結果となり、労働者と資本家は対立することとなると主張した。これは、産業革命後、不況が周期的に繰り返されることを見たマルクスが、その原因を、資本家が自分の投資で買い集めた生産施設を、その施設が古くなって、生産性が低下し、経営に支障が出るまで使おうとするからであると考えたからである。

つまり、資本家による生産手段の所有が問題の根源であるとした。このことから、生産手段を個人の所有とするのではなく、国家の管理とすれば、資本家はいなくなるので、人々は平等になると考えた。これは、物に焦点を当てて考えたからである。それを唯物論と言う。さらに、資本家がものを生産して金もうけができるのは、市場で生産したものを売り、富を得ることができるからであるとした。つまり、市場が存在しなければ、資本家と言えども富を築くことはできない。

人々が生きるために必要なものは、国の人口から必要な量を計算することができるので、市場が存在しなくても、必要な分だけ生産することは可能なはずである。このようにして、人々が必要とする量の生産を計画的に実施しようとするのが、計画経済である。このやり方であれば、余剰分が生まれないし、不足分も生まれることはない。つまり、市場が存在しなくても、ものの生産と配分は可能であると、マルクス考えたのである。

マルクスは、個人の所有を認めず、市場をなくすことで、資本主義で起こる人々の間の貧富の差をなくすことができると考えたのである。このマルクスの思想に基づいた国家の建設を目指したのが、共産主義である。旧ソビエト連邦は、帝政ロシアを倒した人々が、貧富の差が極端だった社会を、平等な社会に改革しようと建設した国であった。しかし、現実には人間の欲望は、資本の蓄積ができない社会でも、尽きることを知らず、共産主義経済は成長できないため、失敗に終わった。

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